NEW GEOGRAPHIC MUSIC（コンピレーション盤）
		YOU DON'T NEED DARKNESS TO DO WHAT YOU THINK IS RIGHT
		全16曲／計58：50
		ポリスター PSCR-5992
		2,345円（2001/09/12）
		［英国］
		切なくて愛しい“癒し”のポップ集

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僕にはかつて、コンピ盤を聴いて「とっても良かったぁ！」なんて大喜びするような経験は一度だって無かったのだけれども、初めてそう思えるアルバムに巡り会いました。ブリティッシュ・ポップ・バンドのパステルズのメンバーであるスティーヴン・パステルとカトリーナ・ミッチェルが主宰しているレーベル「ジオグラフィック」。これはそのジオグラフィックに所属しているミュージシャン達の曲を集めたものです。

収録されている16曲はヴォーカル曲もインスト曲もゴチャ混ぜにされて、15組のミュージシャンが参加しているにも関わらず、統一感があり捨て曲無しの名曲揃いだ。アルバムはパステルズの曲で始まります。“癒し”などという言葉はもう陳腐になりつつありますが、のほほんでほんわかな彼らの曲はホントに心を解きほぐしてくれる。もしかすると今年はパステルズが大ブレークするかもしれない、そんな予感がよぎる彼ら独自の世界なのだ。

[09]は女性シンガーが朗々と歌い上げるヴォーカル曲で、決して眉間にしわを寄せて声を張り上げるのではなくあくまでもやさしく愛らしい。さらにパーカッシヴなピアノとトランペットの響きの対比がこの上なく美しい。[10]ではなんと小松政夫扮する“コマツの親分”の登場曲「ベン、ベケベケベケベン、………ヒャラァ〜ン！」というお琴(風)の響き。そのメロディにスティーヴ・ライヒの「18人の音楽家のための音楽」のようなグロッケンシュピールとピアノがきらびやかに打ち鳴らされる。サックスやヴァイオリンの絡み方も絶妙で、見事なミニマル曲に仕上がっています。[14]がまた名曲。ミニマルなギターのリフに、フォーキーな歌を乗せる。ジワジワとギターが折り重なって、クライマックスを迎える。昔にぎやかだった街を思いやる詩の情景が目に浮かんできで、涙が出てきそうになります。間違いなくこのアルバムのハイライトです。

ラストはマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのケヴィン・シールズによるインスト小品。冒頭のパステルズの曲と対を成すものです。シールズは以前からパステルズと交流が深く、リミックス・アルバム『イルミナティ』に引き続き参加となりました。しっかし、本家マイ・ブラからはかれこれ10年もアルバムがリリースされてないことを考えれば、尻軽くコンピになんか参加してないで、早く新作を作ってちょうだいなって言いたいぞ、ケヴィン！　頼むでぇ。

テクニックをブリブリ言わせ、変則バリバリで長時間攻めまくるプログレはそれはそれで素晴らしいし、僕自身も大好きだ。僕同様にそんなプログレ耳に馴染んでいる皆さん、こんなコンピ盤でしばしホッとするひとときをお過ごししてみてはいかがでしょうか。

〈2002.03〉