MÚM（ムーム）
		YESTERDAY WAS DRAMATIC - TODAY IS OK
		全10曲／計67：36
		P-ヴァイン PCD-23157
		2,415円（2001/09/25発売）
		［アイスランド］2000年作
		アイスランドの郷愁を深々と誘うエレクトロ・ミュージック

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2003年の本年は私にとって不作の年でありました。このコーナーに掲載するレヴューは世間的にそれほど認知されていないにも関わらず衝撃的な感動を受けつつドつぼにハマったお気に入り盤を紹介しているわけですが、今年はどうもその気になるディスクが現れない。そうこうしているうちに一年が過ぎようとしているこの年末になってようやく、心からオススメしたいアルバムに出会いました。これは2001年に日本で発売されましたので（本国では2000年）新鮮なネタではありませんが、とてもホットな作品なのであえてレヴュー致しました。

ムームと読み、アイスランドのバンドです。そしてこれがデビュー盤。レコード店でCDを物色していたらジャケットがたまたま目に付き、帯のライナーを読んで私の枯渇した好奇の心が揺れ動いたのであります。そのライナーを寄せていたのが、私の敬愛すべきパステルズのスティーヴン・パステルでした。このコーナーでも取り上げたジオグラフィック盤も好盤だったパステルズ推薦とあっちゃぁ、ますます買わずにはいられないというものです。早速手にした当のアルバムをプレーヤーにかけてみますと……。

前置きが長くなりましたが、この作品は男女2人づつの4人組みがアコーディオン、メロディカやグロッケンシュピールなどの生楽器と電子音とを融合・調和させたインスト・ミュージックです。エレクトロニカというと無機質な印象を与えてしまいますが、生楽器がメロディを奏でるあたりでムームの音楽は極めて人肌に近く、温もりがあり牧歌的で、しかもアイスランドの荒涼とした大地をイメージさせる美しいサウンド・スケープなのです。

ベースとなるエレクトロ・ビーツは単調にあらず、ポリリズミックを形成して複雑なリズムを刻み、それでいて時にダンサブルになったりする。メランコリックなメロディに独特の雰囲気があり、5曲目などは初期のトータスのようなニュアンスも感じられます。7分以上の曲が半数を占めていて、一本調子で通しているようでありながら組曲のような構成をしていて、あまりに緻密な音像に驚かされてしまいました。全曲においてメロディ以前に“音”そのものが右脳を刺激し、その“音”だけで聴き入ってしまうのです。つまりムームの生み出す“音色”がとても美しいのですわん。

スティーヴン・パステルがライナーを寄稿した気持ちがじゅうにぶんに納得できる、聴けば聴くほど愛おしい作品になりそうです。

〈2003.12〉