フュー・テレーズ
		FEU THÉRÉSE
		全5曲／計40：27
		CONSTELLATION RECORD CST040-2（日本未発売）
		［カナダ］2006年作
		予測不可能な規格外ノイズ・ロック
		オフィシャルHP＜http://www.cstrecords.com/＞

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カナダのレーベル、コンステレーション・レコードからまたも刺激的なバンドがデビューしました。このフュー・テレーズはフライ・パン・アムのギタリスト、ジョナサンを中心に2004年にモントリオールで結成された4人組です。フライ・パン・アムは無期限の活動停止に入ったらしく極めて残念なことになりましたが、こんな秘密兵器を残しておいてくれたとは！うれしい限りです。本作は全5曲で構成されていますが、どれもみな違うテイストで、しかも一曲の中にもいろいろと異なった表情を見せる摩訶不思議な作品に仕上がっています。

雷鳴が轟いた後、電子ノイズが縦横無尽に飛び交いスコールのようになっていく[01]の冒頭は、このバンドがからくり屋敷のような仕掛けと罠を散りばめ、聴き手を惹きつける演出好きな体質であることを覗かせます。まもなく突如として、ノイ！から継承された『マーズ・オーディアック・クインテッド』の頃のステレオラブのような、シンプル・ビートのノリの良いポップ・サウンドに変化。オーケストレーションの音などはトランズ・アムのようでもあって、しかしながら後半ではギターのノイズをたっぷりと注入してくれています。この[01]からしてバンドの多趣味が伺えます。

[02]はビートを効かせたベースとドラムがカンのようなダンス・チューン。ヴォーカルがウナリ声を上げ、じきにグチャグチャ回されるディスク操作とノイジーに爆発するギターが絡んで混沌とした様相を呈してきます。続く気怠そうに歌う[03]は怪しげな音響も相まって妙に艶めかしい雰囲気が味わえます。が、やはりそのままでは終わらずに、中盤ではジャングル・ビートに歪ませたギターが徐々に暴れ始め、終盤ではついにノイズ・ギターの洪水になります。この盛り上げ方は“ダンサブルなゴッドスピード”と言ってしまいそう。

[04]はシンフォ系のようなキーボード・オーケストレーションで疾走し、とてもプログレ的でかなり正攻法な印象の曲。しかし後半は何故かブルージーなサックス・ソロへと方向転換。ねっとりしたギターにベタベタのサックスで、ディスク操作によって模されたカモメが波止場を飛び交い、トレンチコートの衿を立てて「海がオレを呼んでるぜ…」のBGM的な曲になってしまう。このヘンテコリンさはタダ者ではありません。終曲の[05]はジャングルを当てもなく歩く行軍を表現したようなリズムと音響の12分間。起伏の無いモノクロなサイケ・サウンドだ。

フュー・テレーズ！　種種雑多な多方面の趣向を詰め込んだワンダーランドなのだ。今後を乞うご期待！

〈2006.09〉