DIRECTIONS IN MUSIC
		by BUNDY K. BROWN, DOUG SCHARIN, JAMES WARDEN
		全10曲／計48：12（ボーナス・トラック2曲収録）
		徳間ジャパン TKCB-72297
		2,000円（2001/12/21発売）
		［アメリカ］1996年作
		初期トータスのような味わいを感じさせる傑作
		オフィシャルHP＜http://www.thrilljockey.com/＞

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私はバンディ・Ｋ・ブラウンが大好きだ。なぜなら彼が参加したアルバムやリミックスで、私の右脳を刺激しなかったことは無いからです。プロデュース作品にしても同様のことが言え、それは同じシカゴのジョン・マッケンタイアやジム・オルークなど名だたるプロデューサーにも勝るとも劣らない感性の鋭さを感じるのです。

この作品はガスター・デル・ソルやトータスの元メンバーだったブラウンがトータス脱退後に結成したプロジェクトによるものです。現在のところ、この一枚のみがリリースされています。ブラウンはトータスの脱退に関してもツアーに参加したくないという理由からだったので、このアルバムも一時的なプロジェクトとして気の向くままに作られたのかも知れません。

ドラマーはこのコーナーでも紹介した「HIM」のダグ・シャーリン。この作品が1996年リリースですので、これで親交を深めて、のちの大傑作アルバム、HIMの『スウォーン・アイズ』となったわけです。シャーリンはHIMにおいてはジャジーな叩き方をしていましたが、ここでは極めてロック的で、トータスのメンバーではないだろかと聴きまごうばかりドラミングです。

私はトータスの作品群の中でもっともファースト・アルバムがトータリティに優れていると思っています。ですからこのアルバムを聴いて、初期トータスがいかにブラウンの手腕が重要だったかが伺えます。『TNT』以降、トータスのサウンドはパッとしなくてとても憂鬱でしたが、同様にそう思われた方々は是非ともこのアルバムを聴いて欲しいです。トータスのファースト・アルバムとアコースティックなミニマル・カントリーのプルマン（ブラウン参加の別プロジェクト）を混ぜたような、ポスト・ロックの原点とも言うべきサウンドが披露されています。

ときにアコースティック、ときにエレクトロ、そしてときにベースがメロディを奏でる独特の乾いた空気を作り上げて、いろいろな感触を与えてくれます。はっきり言って捨て曲はありません。これが2,000円ってあまりにもグッド・プライスですよ。

〈2002.05〉