皆さんはボーナス・トラック（以下ボーナスとします）についてどうお考えですか。「オマケだから素直に嬉しい」「アルバムの本意に反していて不要なシロモノだ」「嬉しいんだけど、邪魔なときがある」とまあ、このように意見が分かれるところでありましょう。私のように、有名バンドの旧譜に対しては「邪魔」なんだけど、未知のバンドのデビュー作に対しては「嬉しい」というワガママなリスナーは結構多いのではないでしょうか。

近年のメジャー・バンドによる紙ジャケット仕様での再リリースに関しては、ほとんどがボーナス無しでアナログ時代の音源を忠実にパッケージングしています。しかし、あろう事かキング・クリムゾンが『ディシプリン』と『スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー』においてボーナスを付加したという“異例事態”をやらかしました。あれは賛否両論だったのではないでしょうか。私には「あのクリムゾンが何故にして安っぽくボーナスを付けたのか？」という疑問が強く残りました。

言い忘れましたが、ボーナスは元来海外ミュージシャンの作品に対してのみ存在しました（ですが、最近は日本ミュージシャンの名盤復刻でも付加されたりします）。内容はと言えば、シングル作であったり、別ヴァージョンであったり、デモ音源であったりとさまざまです。なぜ付加するかは、主に以下のような理由が挙げられると思います。

1）安価な輸入盤への対抗策としての差別化。……付加価値を付けて買ってもらう。
2）日本では海外ミュージシャンのシングルをリリースするという土壌がないので、アルバム発売時にそれらを付加する。
3）CD化に伴う時間的余裕。……80分間収納できるのだから、余った部分に入れてしまう。
4）「シングル集」のように、新たに1枚のアルバムとして発売する余裕がない。

これらは概ねレコード会社が「リスナー側に目を向けた好意」だと言って差し支えないでしょうから、有り難いものであることには間違いありません。ですので、素性の知らない新人バンドなどにオマケが付くのはとっても嬉しいものです。しかし過去の名盤に対してボーナスが付くと、違和感が感じられてあまり気分のイイものではありません。またオリジナル・ジャケットにボーナスが記載されるのもウザったい。

先述のクリムゾンを遥かに凌ぐ例が、昨年再発されたXTCの紙ジャケ盤です。なんと10作品中7作品に計24曲が付加されたてんこ盛り状態だったので、邪魔臭くってしかたありません。24曲もあるのなら一枚にまとめて別にリリースして欲しかった、と思ったのは私だけではないはずです。私が今年の2月に再発された山下達郎のリマスター盤を買い控えているのも、ゴッテリと追加されたボーナスのせいだと言って過言ではありません（品の無いカラオケ・ヴァージョンには購買欲も萎えます）。

元来、私は音楽を聴くときは45〜55分が「短すぎず長すぎない」ちょうど良い時間だと思っています。40分より短いと呆気なく感じるし、60分を越えるとよっぽどの名盤でない限りダレてきてしまいます。ボーナスが追加されると大抵は70分前後に膨れあがります。これがとても鬱陶しくなるんですよね。過去の名盤だとオリジナルの後に“異物”が入ったことで風味を損なうし、初めて聴くモノではどこがアルバムの終わりなのか分からなくなってしまいます。稀にアルバム曲中に挿入されるケースもあり、言語道断もいいところです（ステレオラブの『サウンド−ダスト』がそうでした）。この対応策としてアルバムの終わりとボーナスとの境に無音部分を入れるという小細工をすることがありますが、これは数十秒程度なら許せます。しかし数分にもなるとイライラしてきて、いい加減にしてくれって言いたくなるんですよね。

「それならプログラムすればイイんじゃない？」とご提言される方もあろうかと思います。しかし、聴く度に一々プログラムするのは面倒極まりありません。特にポータブル・プレーヤーやカー・ステレオの場合は尚更です。そんな手間をかけるのでしたら、本編が終わったら停止ボタンを押すことを考えるでしょう。

前置きが長くなりましたが、そこで提案なんです。ハード・メーカーさんとソフト・メーカーさんの双方の協力でこの問題を解決して欲しいんです。簡単なことなんです。通常、プレイ・ボタンを押すと曲順通り音楽が流れます。これ以外のプログラムやランダムといった聴き方は別にセットをします。プレイ・ボタンを押すと曲順通り聴くのはその操作で問題ありません。ただ、もう一つ《ダブル・クリック》というボタン操作を可能にしてください。つまり、プレイ・ボタンを『ワン・クリックすれば通常プレイ』、『ダブル・クリックでボーナス抜きプレイ』というボタン操作ができるようにしてもらえればいいんです。

『ワン・クリックで通常プレイ』	『ダブル・クリックでボーナス・トラック抜きプレイ』

ソフト・メーカーさんはCDのボーナスに入るところにマーカーを入れてもらって、ハード・メーカーさんはCDプレーヤーがそれを認識できるようにしていただければいいわけです。ダブル・クリックをした場合は、正規のアルバム曲だけ再生し、ボーナス・トラックは再生しないようにするんです。たったこれだけのことで、ボーナスをいくら付けていただいても聴き手の負担にはなりません。操作も煩わしくありません。

是非、是非、ご検討いただけるようお願いする次第です。ホント、そうなってくれないかなぁ。

〈2002.10〉

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